A 「どうせぼくは滑るより転がるほうが似合ってますよ」
B 「そ、そんなに太ったかな?」
A 「もう、帰ろうよ。それにほら、雲行きだって怪しいし」ぼくはそう言って、空を指さした。
B 「じゃああと一回だけだよ」真理の懇願するような表情に負けて、ぼくはしぶしぶ承知した。
A 一旦部屋に戻って着替えると、玄関脇の談話室で落ち合った。
B 一旦部屋に戻って着替えてから、夕食までどちらかの部屋で話でもしようということになった。
A 「わあっ!もういいよ!もうすっかり疲れが取れたよ。ありがとう」
ぼくはドギマギしながら起き上がった。
B ……もうちょっと……もうちょっと上へ……。
A 「きっと幽霊だよ」
B 「スパイでもひそんでるんじゃないか?」
A 「ええっ、もう?もうちょっと二人きりでいようよ」
B 「う、うん……いいけど」
A 「な、何言ってんだよ!そんなつもりじゃ……」ぼくはドギマギした。
B 「愚問だよ、ハニー。ぼくの好みは、ベイベー、君だけさ!」ぼくはチッチッチッと指を振った。
C 「待ってて、じっくり吟味するから」ぼくはなめるような視線を向けた。
A 「……うん」ぼくは正直に答えた。
B 「真理の方が、ずっときれいさ」ぼくはお世辞を言った。
A 「きれいだ」……外国映画の男優のように、スマートに決めた。
B 「君の瞳に乾杯」……ハンフリー・ボガードを気取った。
C 「セクシーだよ」……007のように甘く危険な香りを漂わせた。
D 「ガチョーン」……とっておきの谷啓の物真似を披露した。
A 「しかし、ヤクザがこんなところに……?」ぼくは思わず口にしていた。
B 「あの人、ヤクザかなあ?」ぼくは真理に意見を求めた。
A 「じょ、冗談だろ?こんな吹雪じゃ、ナイターなんてやってないんじゃない?」それにもう体だってぼろぼろだよ、と思った。」
B 「それもいいかもね」疲れも少し取れ、腹も一杯になったので、もう一滑りしてもいいような気がした。
A 「え?……ああ、もちろん」ぼくは笑顔を返した。
B 「嫌だよ、バイトあるのに」こっちの都合も考えてくれよ……。
C 「もちろん宿泊代は、タダなんだろうね!」こういうことはキチッと念を押しておかなければ。
「こんやかまいたちがあらわれる」
A 「何でもないわけないだろ。真理、顔色よくないよ」ぼくは強い口調で言った。
B が、ぼくはあえて、それ以上追求しなかった。
A 可奈子ちゃんに聞いてみることにした。
B 啓子ちゃんに聞いてみることにした。
C 亜希ちゃんに聞いてみることにした。
A 「真理! 待ってよ!」後ろから呼び止めた。
B まあいいか、と諦めた。
A もっとよく見えるように、顔を近づけた。
B 目をそらしながらワインをぐいと飲み干した。
A「え? ……うん、まあ」
B「いや、あんなのどうでもいいんだよ。君の方がずっと素敵さ」
A「新しい雇い主を探す?」
B「転職する?」
C「告白手記でも書く?」
A ベッドに入って目を閉じ、羊の数を数えることにした。
B 部屋に雑誌が置いてあったのでそれを隅から隅まで読むことにした。
C 暇があったら読もうと持って来ていた文庫本を取り出した。
A「いえ、知りませんよ」
B「ゆうべなら、会いましたけどね」
A「あんたこそ何者だ」
B「ただの学生です。スパイなんかじゃないですよ」
C「な……何者って……どういう……意味ですか?」
A「全然心配じゃないよ」
B「そりゃ……まあ」
A 河村亜希を後ろから羽交い締めにしようと飛びかかった。
B アイスピックめがけて、けりつけた。
C 誤解を解けば何とかなると思い、話し合おうとした。
A「ぼくも行くよ」
B「ぼくはここに残るよ」
A「さあ、一緒に来い」ぼくは強気な態度に出た。
B「一緒に、行ってくれますね?」ぼくは下手に出た。
A 裏口から出るのは変じゃないか?
B 服装が変じゃないか?
A ぼくは俊夫さんに駆け寄った。
B ぼくはドアからそっと顔を出し、外をのぞいた。
A「できるだけのことはするよ」
B「……悪いけど、ぼくはまだ死にたくないよ」
C「真理……君のためなら死ねる」
A 胸のあたりに手を回し、背中にしがみついた。
B お尻を抱くみたいに腰に手をまわした。
A しかし、やるしかないことは分かっていた。
B「無理だ! そんなことできるわけないよ!」
A とにかく質問で時間を稼ごうと思った。
B 取引を持ちかけようと思った。
END14 伝説のスパイ
完